多重結合の電子構造と反応性

Nb-C multibonds
 金属と炭素の多重結合は、有機金属化学における代表的な結合様式です。 幾つかの有機金属化学反応で、その結合生成・解離は重要なステップです。 金属と炭素の多重結合には、Fisher型とSchrock型の2つがあることが知られており、 その反応性に違いが見られます。
 
 1980年代初め、中辻らは、金属―炭素多重結合の分子軌道計算を行い、 反応性の違いを理論から説明しました。 これら有機金属の反応性は、電荷コントロールの反応機構では説明できず、 フロンティア軌道理論により、統一的に理解できることを示しました。 さらに、金属―炭素結合回りの回転は、ほとんど自由回転であり、 炭素―炭素多重結合と大きく異なることを示しました。 また、金属―ケイ素多重結合についても検討し、その可能性を示しました。
 

References
  • Ab Initio Electronic Structures and Reactivities of Metal Carbene Complexes: Fischer-Type Compounds, (CO)5Cr=CH(OH) and (CO)4Fe=CH(OH), H. Nakatsuji, J. Ushio, S. Han, and T. Yonezawa, J. Am. Chem. Soc., 105, 426 (1983).
  • Electronic Structures and Reactivities of Metal-Carbon Multiple Bonds; Schrock-Type Metal-Carbene Complex and Metal-Carbyne Complex, J. Ushio, H. Nakatsuji, and T. Yonezawa, J. Am. Chem. Soc., 106, 5892 (1984).
  • Does a Silylene-Metal Complex Exist?, H. Nakatsuji, J. Ushio, and T. Yonezawa, J. Organometal. Chem., 258, C1-C4 (1983).