今年も革新的量子化学シンポジウムを5月14日(土)に京都キャンパスプラザにて開催いたします。参加費は無料です。皆様ふるってご参加ください。ポスターはこちらよりダウンロード頂けます。
第10回 革新的量子化学シンポジウム
プログラム
13:05 挨拶・司会 中辻 博
特別講演
13:10 – 14:00 杉山 弘 (京都大学 理学研究科, 物質―細胞統合システム拠点)
「DNAを中心としたケミカルバイオロジー」 DNAは生命の設計図であり塩基配列情報を持っている。DNAの化学合成法は確立し、酵素反応と組み合わせれば如何なる配列でも合成できる。また合成したDNAはWatson-Crick 塩基対の形成により安定な2本鎖構造を形成する。DNAの塩基配列の組み合わせによって様々なナノスケールの構造をデザインでき、特にDNAオリガミ法を用いると自在にボトムアップ的にナノ構造体が簡単に構築できる。我々はこれまでDNA の構造や反応性そしてその機能の調節について分子レベルで研究を行ってきた。最近、DNAオリガミ法によるナノ構造体を利用して、設計したナノスケール空間での生体分子の操作と挙動の可視化、さらに構造体の集積化とデバイス化を検討している。例えば、設計したDNAナノ構造上で「DNAモーター」と呼ばれるDNA 分子機械の数ナノメートルの動きを直接捉え解析した。また「DNA フレーム」と名付けた構造体を設計作成し、酵素の反応やDNAの構造変化を直接観測する新しい手法を開発した。このDNAフレーム構造を利用することで、酵素の反応性がDNAの張力に依存することを明らかにした。また脂質二重膜を利用し複数のDNAオリガミを配置することにも成功した。 細胞内のDNAに目を転じると、2003年にヒトゲノム配列も決定され、新しいポストゲノム時代に突入し研究が急展開している。遺伝子診断が日常的に行われるようになり、次世代シーケンサーの登場により個人のゲノムDNA 配列の決定も10万円程度で決定できるようになった。遺伝子の発現はDNA 塩基配列情報とともにヒストンのアセチル化やDNA のメチル化などのエピジェネティックな修飾によっても制御されていることが明らかになってきた。我々は、DNA の塩基配列を認識する人工遺伝子スイッチを分子設計することによって、任意の遺伝子の発現を制御する手法を開発することを目指している。N-メチルピロール-N-メチルイミダゾール(Py-Im)ポリアミドは、DNA 塩基配列特異的に結合する人工分子である。我々はこれまで、このポリアミドにアルキル化剤をコンジュゲートさせることにより様々な配列特異的アルキル化剤を合成し、選択的な遺伝子発現の抑制(オフスイッチ)に成功している。また最近では遺伝子の発現の活性化(オンスイッチ)を目指し、ポリアミドにヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤をコンジュゲートさせ遺伝子の発現を検討した。その結果結合配列が異なると、それに応じて異なる遺伝子群を活性化することが確認された。これらの手法は、細胞の初期化や、目的とする細胞へ分化させる方法論も確立できる可能性を示しており、遺伝子発現の異常が原因の病気に対する根本的な治療への道を拓く可能性があることを示している。本発表ではこれらの最近の進展について述べたい。 14:00 ? 14:40 柳井 毅 (分子科学研究所 理論・計算分子科学研究領域)
「密度行列繰り込み群に基づく拡張多状態多参照擬縮重摂動理論」 多参照電子状態計算は、近年、密度行列繰り込み群(DMRG)に基盤とすることで発展し、大規模な系への適用が実現されている。本発表では、高精度な大規模励起状態計算を目指した拡張多状態多参照擬縮重摂動理論の開発を議論する。光化学などの励起状態を介する反応の理論解析では、多配置的波動関数に基づく取り扱いがしばしば必要とされ、また動的電子相関の効果も重要となる。多参照摂動理論では、状態が擬縮重する多状態系を適切に取り扱うためには、単状態波動関数を混成する擬縮重摂動理論を用いる必要がある。本研究では、DMRG波動関数を参照関数として、どのように多参照擬縮重摂動理論を構築することができるかについて背景も含めて示す。 14:40 ? 15:40 休憩
15:40 司会 波田 雅彦
15:40 ? 16:05 中嶋 浩之 (量子化学研究協会研究所)
「認定NPO法人としての出発」 「NPO法人 量子化学研究協会」は、2016年3月24日に京都市より「認定NPO法人 量子化学研究協会」として認定されました。認定NPO法人は、行政府により、NPO法人の中でもその活動・財務等が優秀な法人のみを厳格な審査のうえ選んで認定されるもので、全NPO法人のうち僅か2%です。ここでは、認定NPO法人とは何か、認定NPO法人へ寄付をする場合の税制上の優遇など、その制度について解説したあと、認定NPO法人としての量子化学研究協会の新たな出発と決意について述べたいと思います。 16:05 ? 16:45 中辻 博(量子化学研究協会研究所)
「予言的量子化学の設計」 真に定量的予?能がありかつ有用な量?化学を建設するためには、?化学を?配しているシュレーディンガー?程式を正確に解く?般的な?法を確?し、?これを化学的に有?な分?群に応?して正確な予?と理解ができる理論・計算体系を創造する、こと、?その理論体系は、正確なエネルギーやpropertyなどの正確な予言は言うに及ばず、それがなぜ得られるのかについての理解も可能にすること、が必要である。演者は、ここ数年の研究によって、化学の問題に対してシュレーディンガー?程式は解けた、と確信できるようになった。その理由と、化学理論としての設計について述べる。そこで重要と考えている事は、?化学者が本理論によって、定量性は勿論、概念においても、研究の指針を得ることができること、?理論体系が、小さな分子は勿論、普通の系、巨大系に至るまで共通に応用でき、巨大系に応用可能なorder N的な要素を自然に内包していること、?exact theoryは勿論、それほどの精度を要しない場合も、ほぼ同じ理論体系で研究でき、両体系の連携が容易であること、などである。その様な予?的量?化学の設計の可能性について述べる。 |
革新的量子化学シンポジウムにご興味をお持ちの方は振ってご参加ください。一般の皆様のご出席を歓迎いたします。また、懇親会にもどうぞご参加ください。ご出席の方は office @ qcri.or.jp まで、お知らせください。
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